B2B SaaS・デザインシステム — 03 / 000%EN日本語繁中
ケース 03 — OneDegree Global — 2022年

中小規模の保険会社が、開発の順番待ちをせずに商品ページを出すには。

企業
OneDegree Global
担当
シニアプロダクトデザイナー
プラットフォーム
Web、SaaS
期間
2022年

プロジェクト概要

Launchpad は、限られた社内 IT リソースの中でも、中小規模の保険会社が保険商品ページを迅速に制作・運用できるよう設計された、モジュール型 CMS です。導入以前は、公開までに3か月以上かかることも珍しくありませんでした。

新しいキャンペーンや商品改定のたびに個別開発が必要で、マーケティング部門による要件整理、プロダクトチームとの調整を経てから開発に着手するのが一般的でした。商品やブランドごとにページ構成や品質にもばらつきが生じ、さらに、ちょっとした文言修正であってもエンジニアの対応が必要で、運用面で大きな負荷となっていました。

そこで Launchpad では、保険業務に特化したテンプレートベースの CMS を構築し、再利用可能なレイアウトブロックを組み合わせることで、ページ構成、フォーム設定、アセット登録、公開までをノーコードで完結できるようにしました。私はエディター全体の UI 設計とインタラクション設計を主導し、プロダクトの進行に合わせて新機能の UX 設計も引き継ぎました。

ページ公開までの期間、導入前
3か月以上
プロジェクトのデザイナー数
4名
再利用可能なモジュール種別
4種
購入フローのステップ数
5

目標

プロダクト・ビジネス合意
  1. 日常的な変更から開発者を外す
    レイアウトの微調整や文言修正に、エンジニアのチケットを必要としない状態にする。
  2. ページ品質を標準化する
    構造を一つに揃え、商品やブランドごとの品質のばらつきをなくす。
  3. 市場投入までの時間を短縮する
    個別開発を前提としない構成にし、リリースを数か月から数週間へ。
  4. 非技術系チームが扱える設計にする
    ページを作るのはマーケティングと運用の担当者であり、エンジニアではない。

課題

社内ヒアリングでは、3つのペインポイントが繰り返し挙がりました。いずれも根は同じで、ページ上に再利用できるものが何もないため、すべてが個別開発になっていたことです。

  1. 軽微な変更でも開発者に依存する
    レイアウト修正やコンテンツ更新であっても、開発側のキューに並ぶ必要があり、日常業務の導線に専門職が挟まっている状態でした。
  2. 構成と品質にばらつきがある
    商品やブランドごとに個別に作られてきたため、ページ構成も見た目の品質も揃っていませんでした。
  3. 公開・更新に3か月以上 — 積み上がった結果
    要件整理、待ち時間、開発、テストが積み重なり、キャンペーンの前提そのものが変わってしまうほどの遅延になっていました。

リサーチ

社内関係者 — ビジネス・オンボーディング・サポート

エンドユーザーに会えない状態での設計

エディターを実際に使う保険会社の担当者に、直接アクセスすることはできませんでした。これはこのプロジェクトの明確な制約であり、以降のすべての判断に影響しています。

そのため、彼らに最も近い立場にいる社内チーム —— ビジネス、オンボーディング、サポート —— からヒアリングを行いました。いずれも現行プロセスの結果を日々受け止めている部門です。ここでのインサイトは構造上すべて間接的なものであり、それ以上のものとして扱ってはいません。設計判断も、特定のユーザー行動に賭けるのではなく、後から戻せる構造的な選択に寄せています。

タスク整理と優先順位付け

非技術系ユーザーが商品ページを公開するまでに実際に行う作業を整理しました。レイアウトを選び、コンテンツを編集し、フォームとステップを設定し、公開前に確認する。この4つに絞り、例外への対応を意図的に見送ったことが、エディターを予測可能なものに保ちました。すべてに対応するビルダーは、結果として何も教えてくれません。

一般的なページビルダーの競合調査を行い、編集ロジックの基準としました。既存ツールの経験があれば違和感なく操作できることを狙っています。

制約

技術 · ブランド

設計を始める前から動かせないものが2つありました。エディターは完全なライブプレビューを描画できないこと、そしてビジュアルは他社のブランドの背後に消えなければならないことです。

どちらも交渉の余地はなく、そして両方が同じ方向を指していました —— これは表現力で勝てるプロダクトではない、ということです。初期案では、柔らかいシャドウや丸み、ブラーなどを用いた、より表情のある UI も検討しました。しかしステークホルダーレビューを通じて、独自の個性を持つインターフェースは保険各社のブランドガイドラインと衝突することが明確になり、最終的にニュートラルで構造的な方向へ引き戻しました。

難しかったのはプレビューの制約のほうです。ライブプレビューのないページビルダーは、ユーザーに「信じて公開する」ことを求めます。それは非技術系ユーザーがツールを信用しなくなる、まさにその瞬間です。制約として受け入れるのではなく、Standard API による実データ連携を提案し、編集中に見えているものが少なくとも構造として公開後のページと一致する状態を目指しました。

この2つの制約を早い段階で言語化したことが、その後の設計を実装可能なものにしました。そうしなければ、レビューは通るが出荷できないエディターを設計することになっていたはずです。

実装したもの

編集モデル

このプロダクト全体が、ひとつの判断の上に乗っています。ページは文書ではなく、ブロックの積み重ねであるということ。他のすべてはそこから導かれます —— 一貫性も、再利用も、マーケターが操作できるという事実も。

実装済みコアエディター
モジュール型レイアウトシステム

決められたブロックからページを組み立てるなら、品質は誰が作ったかに依存しなくなる。

すべてのページが個別に作られていたため、リリースを重ねても何も改善されず、一貫性も保たれませんでした。

ブロック
  • 商品ハイライト、FAQ、フォーム、メディアを差し替え可能なブロックとして提供
  • 既定レイアウトから素早く着手できる
  • テーマカラーの切り替えと背景画像のアップロード
  • 構造をシステム側が保持し、編集者の規律に依存しない
期待効果
ページは「作る」ものから「組む」ものになり、それが開発チームを日常業務から外します。
作成フロー ワークスペース
作成フロー ワークスペース
エディターの画面08
統一された設定パネル

何を選んでも同じパネルが開く —— ブロックの種類ごとではなく、構造をひとつ覚えるだけで済む。

非技術系ユーザーは機能ごとにメンタルモデルを作りません。ひとつ作って使い回します。モジュールごとに編集画面が異なれば、ブロックの種類の数だけツールを学び直すことになります。

パターン
  • どのモジュールを選んでも、右側に同じパネルが開く
  • テキスト、アセット、表示設定を同一のレイアウトで扱う
  • 選択状態、ドラッグ&ドロップ、遷移を一度だけ定義
期待効果
ページタイプごとではなく、構造をひとつ覚えるだけで済む。このプロダクトで学習コストを最も大きく下げている部分です。
プロパティサブパネル
パネルと設定09
設定パネル
レスポンシブ確認 — Q&A
レスポンシブ確認 — Q&A
レスポンシブ確認 — 書類
レスポンシブ確認 — 書類
レスポンシブ確認 — ステッパー
レスポンシブ確認 — ステッパー
レスポンシブ確認 — アップロード
レスポンシブ確認 — アップロード

コア領域

CMS · 購入フロー · デザインシステム
CMS と外部システムの連携

商品データは再入力せず取り込む —— 手入力は小さなリスクではなく、コンプライアンス上のリスクだから。

エディターは IXT プラットフォームや外部システムと API 連携します。保険の商品データは規制対象でバージョン管理されるものなので、ページが第二の原本になってはいけません。

フロー
商品情報の取り込み、レビュー申請、公開予約、終了後の非公開化までを、同じテンプレートベースの UI で完結できます。
期待効果
商品データの参照元がひとつになり、運用担当者が単独で回せる公開フローが手に入ります。
見積ステップ
見積ステップ
編集とプレビュー02
公開された着陸ページ02
公開ページ — デスクトップ
公開ページ — デスクトップ
公開ページ — モバイル
公開ページ — モバイル
購入フローテンプレート

購入までの流れはほとんどの中小規模保険会社で同じ5ステップ —— だから個別開発ではなくテンプレートとして提供した。

ここは保険会社が最も間違えられない部分であり、同時に最も自力で作りにくい部分です。テンプレート化する価値が最も高いのがここでした。

ステップ
アカウント作成、プラン選択、フォーム入力、見積もり、決済。
期待効果
個別の開発プロジェクトを立てずに、完結した購入体験を用意できる状態になります。
サインアップ
サインアップ
見積アップロード
見積アップロード
プラン選択
プラン選択
引受 — 法定相続人
引受 — 法定相続人
確認
確認
決済
決済
サインアップ — モバイル
サインアップ — モバイル
見積 — モバイル
見積 — モバイル
プラン詳細 — モバイル
プラン詳細 — モバイル
引受 — モバイル
引受 — モバイル
確認 — モバイル
確認 — モバイル
決済 — モバイル
決済 — モバイル
デザインシステム

トークンは値ではなく状態を名前にする。だからライトとダークは同じ定義から導かれる。

Atomic Design の考え方に基づき、Atoms、Molecules、再利用可能なレイアウトブロックで構成しました。新規モジュールは作り直すのではなく、継承して成立します。

トークン
セマンティックカラーシステム —— default、hover、error、success。たまたまその色であることではなく、何を意味するかで名付けています。
意図
長時間の編集作業でも視認性を保ち、同時に複数の保険会社ブランドの下に置けるだけのニュートラルさを維持すること。
期待効果
商品ページと購入フローの一貫性が保たれ、状態が既に名付けられているぶん、開発への引き継ぎも明確になりました。
エレメント — ダーク
エレメント — ダーク
エレメント — ダーク、拡張
エレメント — ダーク、拡張
カラー値
カラー値
セマンティックトークン
セマンティックトークン

検討して見送ったもの

検討のうえ、採用せず
未採用社内レビューを経て方向転換
表情のあるエディター UI
柔らかいシャドウ、丸み、ブラー効果。独自性の強いインターフェースは保険各社のブランドガイドラインと競合することがレビューで明確になり、方向を変えました。
完全なライブプレビュー
プラットフォーム側の制約により実現できませんでした。構造化されたプレビュー状態と API 連携データで置き換えています —— システムが守れない約束をするより、正直な部分解を選びました。

結果

以下の数値は想定値とパートナーからの初期フィードバックであり、計測された結果ではありません。本番データで検証できる段階の前に離任しているため、それ以上のものとして提示するつもりはありません。

ページ公開までの期間
約1か月
2〜3か月から
開発・QA 工数
約50%
削減、想定値
Sandbox testing — パートナー保険会社より
保険業界向けに特化して設計されているため、必要な機能が揃っていて使いやすい。
Sandbox パートナー

汎用ビルダーではなく保険特化テンプレートに賭けた判断を裏づける声。

WordPress も試しましたが、学習コストが高く、このツールは私たちのニーズに合っていると感じました。
Sandbox パートナー

超えるべきは学習コストであり、それを超えたのが統一パネル。

  • チームが拡張できる構造。 新しいモジュールは既存の Atomic コンポーネントとセマンティックトークンを継承するため、追加はデザイン作業ではなく組み合わせで済みます。
  • 引き継ぎのコストが下がった。 トークンシステムで状態に名前を与えたことで、仕様書がそれを説明する必要がなくなり、やり取りが一種類まるごと消えました。
  • 編集モデルが持ちこたえた。 後期に追加した新機能やモジュール設定の深掘りも、当初のインタラクションモデルの中に収まり、例外を作らずに済みました。

この案件から得たもの

  1. 理想と、チームの実際の動き方との折り合いをつける
    伝統的な業界向けの設計では、実際の業務フローとツールの成熟度に照らして調整することが必要です。チームの動き方に合わない先進的な機能は、先進的なのではなく、使われないだけです。
  2. ドメイン理解そのものが設計である
    保険の業務ルールの多くは文書化されておらず、人の頭の中にあります。それをヒアリングで引き出し、マーケターが操作できる構造へ翻訳することが、このプロジェクトの実体でした。その上に乗るインターフェースではなく。