
レガシーなニュースサイトを、読み続けられる場にするには。
- Company
- TVBS Media Inc.
- Role
- Product Design Lead(デザイン単独担当)
- Platform
- Web / モバイルファースト
- Period
- 2024
概要
TVBS News は台湾を代表するニュースプラットフォームです。広告優先・速報性重視の運用が長年積み重なった結果、リーディングフローの断片化、情報階層の不明瞭さ、そしてそのどちらも直せない編集ツールの硬直化が同時に起きていました。
本プロジェクトではデザインを単独で担当し、モバイルファーストのリデザインを主導しました。コアチームは6名——私、PM、エンジニア2名、デザインマネージャー、部門長。その外側では、網路新聞部の編集者と編集主任、営業部門、そして第三者広告ベンダーと協働しています。求められていたのは見た目の刷新ではなく、リーディングフローの回復と、編集者が実際に運用できるモジュール型システムの構築でした。
目標
編集・事業チームとの合意事項- 認知的な中断を減らす記事途中に密集する広告配置が、文脈を分断していました。
- 情報階層を強化する読者が短時間でスキャンし、要点に辿り着ける状態をつくる。
- 回遊深度を高める読了直後に「次を読む理由」が成立する導線を用意する。
- 編集運用のスケーラビリティを支える個別のレイアウト調整ではなく、再利用可能なモジュールで対応する。
ターゲット指標
課題
中核にあったのはリーディングフローの崩れでした。記事途中の広告が文脈を遮り、読者は早期に離脱していた。それを固定化させていた構造的な要因が3つあります。
- 情報階層が古く、要点を拾いづらい短時間でスキャンして重要情報に辿り着けず、没入が続きにくい状態でした。
- 次に読むための文脈導線がない記事下部の推薦コンテンツは汎用的で、読了直後の内容と関連性が薄く、読者は読み続けずに離脱していました。
- CMSの柔軟性不足 — 潜在的な原因編集者が一貫した構造で記事を組み立てる手段がなく、レイアウトと階層の問題が運用の中で再生産され続けていました。
リサーチ
GA4 分析 + 1対1インタビュー行動データ分析
GA4の行動データとスクロール深度を分析したところ、離脱は広告による中断点に集中していました。2023年のデータではモバイルのPVがデスクトップの約6倍、アクティブユーザー数が約5倍である一方、回遊深度はデスクトップの方が高いという逆転が見られました。モバイル体験に固有のフリクションが存在する強い示唆であり、これがモバイルファーストの設計方針を決めた根拠です。
読者の声
この記事が全体の流れの中でどこに位置しているのか分からない。もっと文脈がほしい。
ニュースの時間的な流れを可視化するタイムラインモジュール。
情報が多すぎて、どこを見ればいいのか分からない。
余白・セクション分け・レイアウトリズムの再設計。
広告が多すぎて、TVBSのアプリを使わなくなった。
コンテンツの流れを遮らないモジュール型広告ブロック。
スクロールするとすぐコメントと広告が出てきて、情報が騒がしい。
コメントエリアの構成整理とデフォルト挙動の調整。
読み終わったらそのまま離脱する。下のおすすめは関連性が分からない。
関連コンテンツモジュールと「Shuffle Next」。
なぜこのニュースが表示されているのか分からない。
グルーピング表現とテーマ指標の改善。
古い記事の残存やレイアウトの不整合という形で、編集効率の低さが体験に影響している。
レイアウトプレビュー、メディア操作フロー、構造ガイドラインのCMS改善案。
3つの閲覧志向
- ユーザー像
- オフィスワーカー、フリーランス、モバイル中心
- 利用習慣
- 見出しと要点を素早く確認/通勤中に閲覧/効率重視
- 課題
- 過剰な広告で集中が途切れる/重要情報にフォーカスしづらい
- 設計機会
- 広告密度の最適化/モバイルのスキャン性向上
- ユーザー像
- 学生、ナレッジワーカー、リサーチャー
- 利用習慣
- 関連コンテンツを横断/構造化された背景情報を重視
- 課題
- 出来事の時系列が掴めない/トピック間の関係が不明瞭
- 設計機会
- タイムラインモジュール/文脈に沿った「次に読む」導線
- ユーザー像
- SNS流入(Facebook、LINE など)
- 利用習慣
- SNSから記事を開く/滞在が短い/深掘りしない
- 課題
- 読了後の導線が弱い/探索のきっかけが不足
- 設計機会
- ガイド付きレコメンデーション/軽量な探索インタラクション
どの段階でフリクションが起きるかユーザージャーニーマップ — 5段階
| 段階 | A — Busy Skimmer | B — Context Seeker | C — Passive Reader |
|---|---|---|---|
| 流入 | プッシュ通知、見出しの素早いチェック | トップ/ブックマークから巡回 | Facebook/LINE/メッセージアプリ経由 |
| 記事のスキャン | 要点と主要ビジュアルを拾い読み | 本文を深く読み、参照元も確認 | 高速スクロール、見出しとリード程度 |
| 文脈の確認 | 補足情報やサブセクションは飛ばしがち | タイムライン・背景・ソースリンクを求める | 追加情報を能動的に探さない |
| 記事終端 | 結論で止まる、または広告で遮られて離脱 | 関連ニュースや構造化された続きを求める | 雑然としたレイアウトを見てすぐ離脱 |
| フリクション | 広告による分断/セクションの過密/要点が見つけにくい | タイムラインの不在/グルーピングの弱さ/構造の圧迫感 | 回遊導線がない/内容が自分向けに見えない |
合意形成
編集 ・ 事業 ・ エンジニアリング制約はデザインの質ではありませんでした。収益です。私が動かしたい広告枠は、すべて誰かの数字でした。
収益に影響を与えずに中断を軽減できる領域を見極めるため、編集チームと営業チームとの協議を主導しました。維持すべき広告枠(非交渉領域)と調整可能なレイアウト領域を切り分けることで、後から商業的な理由で却下される提案ではなく、その中で反復できる明確な境界線を先に引いています。
そのうえで策定したロードマップは、ユーザー価値・編集運用の安定性・技術的準備度のバランスを、リリース時期とリソース制約に整合させる形でまとめました。
議論を決着させた利用データ
低利用のUIを直感で削除するのではなく、2024年後半のクリックデータを根拠に方針を決めました。争点となった要素はすべて1.3%未満、うち4つは1.1%未満です。
方針は削除ではなく整理と集約です。ナビゲーションはハンバーガーメニューへ集約しました——その利用率自体は0.06%と低いものの、必要とする読者のための導線として維持しています。シェア機能は単一のボタンに統合しました。
速報ティッカーはすでに広告枠として再活用されていましたが、インタビューでは4人中3人がスキップしていました。本来の情報価値を失っているという判断であり、黙って削除するのではなく、ステークホルダーとの再調整が必要だと結論づけています。
文字サイズについては、端末側の文字サイズ設定と同期する方針を開発と調整しました。高齢の読者が端末側で調整する傾向を踏まえた判断です。十分に機能すればUI上のトグルを置き換えられる想定で、リリース後のフィードバックによる検証を予定していました。
実装優先
11件中2件 ・ 初期開発フェーズ11件のコンセプトをユーザビリティテスト参加者に提示し、有用性と自身の閲覧習慣との関連性で評価してもらいました——うち8件が上位5位に入っています。その後、編集リード・PM・エンジニアと優先度検討ワークショップを実施し、実現性、編集ワークフローへの影響、実装コストの観点から整理しました。初期開発では2つの機能を優先——ユーザーインパクトが大きく、編集運用の複雑性が低いものです。
進行中のニュースの時系列は、読者の頭の中ではなく記事の中にあるべきだった。
出来事の流れを追うために、読者は複数の記事を開いて自分で時系列を組み立てていました。それを直す仕組みが、更新のたびに編集の手間を増やすものであってはなりません。
- 設計
- 記事末尾に配置——読者が一息つき、より広い文脈を求めやすいポイント
- デフォルトは折りたたみ表示とし、リーディングフローを崩さない
- 関連アップデートを展開可能なタイムラインとして提示
- CMSのタグ運用により、編集者が項目の追加・並べ替え・削除を行える
- 期待効果
- 読者は文脈をひと目で把握でき、同一ストーリー群の関連記事へ読み進めやすくなります。



信頼できる推薦エンジンがない以上、選ぶ主導権を読者に返すほかなかった。
汎用的なおすすめ表示では読了後の回遊を促すには不十分で、既存 CMS ではアルゴリズムによる関連性の精度も担保できません。だから精度ではなく、納得できるまで読者自身がシャッフルできることに賭けました。
- 設計
- タップするたびに3件の記事を提示
- トレンド・最新・埋もれがちなカテゴリを混合
- ユーザー履歴やプロフィールに依存しない
- 期待効果
- 習慣的な閲覧範囲を超えた発見が生まれ、回遊深度が高まる可能性があります。
- 計測
- Shuffleのタップ率/再タップ率
- Shuffle経由の記事遷移率
- PV/Session の改善


コア体験の再設計
コンセプト 10・11 と、それを支えるシステムより広く静かな記事へ —— 足すのではなく、剥がすことで。
上部のプレミアム「スカイバナー」は維持し、その直下に誌面性のある大きなキービジュアルを配置して記事の視覚的アンカーとしました。
- 整理・集約
- 複数存在していたSNSシェアボタン、文字サイズ調整、外側に展開されていた24カテゴリナビゲーションをハンバーガーメニューへ集約。
- 再構成
- 広告ユニットをリスト形式に再構成し、利用率の低いタグは横並びでまとめて縦方向のスペースを確保しました。
- 結果
- 広告在庫ではなく可読性を編成原理とした、より広く静かなコンテンツ領域。








ホームページは一覧ではなく、ブランドの面として扱った。
ホームページ経由の流入は記事消費ほど多くありませんが、ブランド認識とリファラーパスへの影響は大きい —— 流入量だけで最適化してよいページではありません。
- 構成
- 複数ストーリーのカルーセル、「Week in Review」、「Upcoming Events」を、最新性と重要度を軸としたブロックで構成。
- 拡張性
- 将来のパーソナライズを想定した設計とし、広告収益比重が相対的に低い点を踏まえて柔軟なスペースも確保しました。
- 結果
- ブランド表現と情報アクセスの均衡。余白を活かしたレイアウトにより視覚的疲労を軽減しています。












まず散らばったナビゲーションを集約し、次にそれを保ち続ける部品を用意する。
コンテンツと広告が多い環境で、そこに毎日いるのは編集チームです。だから仕事は、その負荷を最小化しながらブランド価値を守ることでした。
- メニュー
- 分散していたナビゲーションを一つの拡張可能な構造へ統合。検索、イシューパッケージ、全カテゴリ、アカウント、ニュースレター、テーマ切り替えを含みます。
- システム
- TVBSの象徴的なブルーを基調に、タイポグラフィ、カラートークン、コンポーネントライブラリを整備。
- 将来対応
- 編集チームのコンテンツ拡張を見据え、階層型サブメニューを追加できる構成としました。



パレット
- Blue 100
- #60AAF2
- Blue 200
- #3D9AF6
- Blue 300
- #1B8DFF
- Blue 400
- #0080FF
- Blue 600
- #0B57E6
- Blue 700
- #215AC4
- Orange 300
- #F28155
- Orange 400
- #FF6D33
- Orange 500
- #F65E22
- Orange 600
- #FF4800
アイコン
- indicator-secondary
- Grey 400
- indicator-primary
- Grey 200
- primary
- Grey 800
- secondary
- Blue 600
- logo
- Blue 600
- live broadcast
- Red 400
テキスト・アクション
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- Blue 600
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- Blue 400
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- Blue 600
- action-primary-hover
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- White
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- Grey 100
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- Blue 600
サーフェス・ストローク
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- Red 400
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- White 95
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- Grey 200
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- Grey 200
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- Blue 300
- surface-pills-hover
- Blue 600
- bg-thumbnail
- Grey 200
- bg
- White
- bg-system
- White
タイポグラフィ
- title-primary
- Grey 800
- title-secondary
- Grey 600
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- Blue 600
- body-primary
- Grey 800
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- Grey 600
- body-tertiary
- Blue 600
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- Grey 600
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- Grey 400
- placeholder
- Grey 200
- disable
- Grey 400
- hover
- Blue 400
- bread
- Blue 600
- footer
- Grey 400
デザインシステムのカラートークン — 10段階のパレットに対して47のセマンティックトークン


追加検討
有効性を確認し、後続フェーズへ














成果と学び
リデザイン案は私の在籍期間中にリリースには至りませんでした。提案はステークホルダーのKPIと事業目標に整合していましたが、以下に記すのは検証されたことと引き継いだものであり、私が主張できない成果指標ではありません。
この案件から得たもの
- 制約そのものが要件である広告収益は回避すべき障害ではなく、明示的に線を引いたことが実装可能なリデザインを成立させました。
- 「今あるシステム」に対して設計するShuffle Next が存在するのは、CMSが真のパーソナライズを支えられなかったからです。読者の主導権に賭けたのは妥協ではなく、その条件下での誠実な解でした。
- レガシー組織は根拠で動く意見では決着しなかった議論が、クリックデータでは決着しました。